スペインで就職を(会社編)結婚式・葬式

23 結婚式
1.) 結婚式
 スペインの結婚式に2度出席した。
 その内、披露宴には一度だけ呼ばれた。(2003年3月会社の同僚)
 披露宴に呼ばれることは出費を伴う。
 平均的に2万円程度は祝儀を準備しなければならない。
礼服を持参していない自分は背広と靴を新調した。
 年に4~5回呼ばれる若い女性は悲鳴をあげる。上述の祝儀はスペインの
物価から考えれば結構高価である。それに衣装も必要。
 祝儀は新婚者が披露宴の費用を支払った後、新婚をスタートさせる資金になると言われている。
 日本の結婚のように、全て揃えて新婚生活をするのではなく生活をスタートさせて必要なものを揃えて行く。
長い同棲生活を経ての結婚なら必要品は整えられ御祝儀は預貯金に回る筈である。
 結婚式直前に花嫁・花婿達は女性友達あるいは男性友達のみで前夜祭を徹夜で行い独身時代に別れを告げる。この会に異性は立入り禁止の習慣がある。
 さて、結婚式は大きな教会で400人から500人が列席して行なわれるが全てバスク語なので解らない。理解しようとの努力も不要である。
 驚く事は参列する女性の服装である。
 会社に勤める独身女性はいずれも胸部を大胆にくりぬいた黒いドレスを身にまとう。今まで見た事もない彼女達の装いである。
日本人感覚では結婚式に参加する女性は慎ましくと思っていたが逆であった。体は完全にファッションの一部である。
 式場から出ると、生米を新郎・新婦及び参加者に投げつける。
その意味合いは解らぬが。

2.) 披露宴
 結婚式から披露宴の間に1時間程度の余裕があり、お互いグラスを片手にお喋りが始まる。やがて、ぞろぞろとレストランの会場に移動する。なんと300人はいる。(ご祝儀を出した人達である)
一般的な披露宴の出席者数はこの程度が普通だと聞く。
 何時始まったか、判らぬように食器に料理が用意され隣のテーブルの準備状態に関係なく食事を始める。
 スピーチはない。
 新朗の家族を代表して等スピーチは一切ない。日本でやり過ぎのスピーチもこのように皆無なのは寂しい気がする。
 途中皆から新朗・新婦にキスをせがむ拍手が沸き起こる。
 カップルはこれに応えるがそれ以上のスピーチはしない。
 皿一杯盛られた料理が5~6皿は出てもう腹一杯である。やがて葉巻が配られてカフェを飲み披露宴は終わりとなる。
 この時夜中の1時。これで終わらないのは予測出来る。
 それからダンスが始まる。
 テーブルを会場の端に寄せて広いスペースを作り老いも若きも適当に相手を見つけてダンスが始まる。
社交ダンスではない。誰がリクュエストするのかマンボ・ジルバ、モンキ-、ワルツの音楽何でもある。
 ひどいのになると食事の準備用のサイドテーブルの上に上がり皆を指揮するような格好で踊る。よく見ると会社のベテラン作業長でズボンを下ろし
パンツ姿で踊りだす。
 式場の係員に「危ないからおりて」、
 彼の奥さんからは「恥ずかしいから止めて」
とテーブルから降り上りを繰り返していた。
お開きになったのは朝の5時。命がけの披露宴である。


24.葬式
 さすが、スペイン滞在中に葬式には参列したことはない。
 葬式は家の中では行なわれない。
 結婚式同様、教会で行なわれる。教会は便利である。
 私の住むデバ村には大きな広場が2か所あり、それぞれが新、旧と呼ばれる、旧広場は教会(7世紀建立)の前に噴水を伴った大広場を言う。
 その教会の海側に居住区をはさみ共同墓地がある。
 両者の間には郵便局もあるが死者の通りと呼ばれている。
 死者の教会への搬入、搬出はこの通路を使うのでそう呼ばれる。
日当たりの悪い、陰気な場所である。
 この搬入、搬出時に遭遇すると一切通行禁止で葬儀が優先される。
 村の警察官がコントロールして車や人の出入りを禁じる。
 テレビで見るテロ事件等の犠牲者が教会から霊柩車により搬出される場面で車はクラクションを長く鳴らし参列者全員が拍手で送る。
死者に対する気持ちの表し方が拍手しかないのであろう。こんな事を日本で行なったら殴られても仕方がない。
 スペインでは埋葬墓地が不足し段々と火葬が増えているとも聞く。
 いつぞや、ピレネーのチンドキ山で共同墓地を見た事がある。
 広場の片側の岡を利用し、何段、何列もの横穴式埋葬穴が設けられている。それぞれに蓋があり写真や名前が刻まれ取手に花束が飾れていた。
 この公共墓地には入退場門がありその上部横梁には
   “今日は私、明日は君”
   意味深長な言葉が刻まれていた。