「スペインで就職を」を回想録 アトチャ駅

2)アトチャ駅
 再びアトチャ駅に戻った。改札口広場の中央にある切符売り場で、明日旅行するサンセバスチャン行きの切符を求めようとした。だが、そこにはLARGO(長距離列車)の予約切符売場ではなかった。売場のお嬢さんは英語が多少できるらしいが、最後はスペイン語
「あそこにある、あそこに行きなさい」
と言って改札の外側を指さした。

 改札を出ると、右手の広いコーナーがLARGOの切符売場である。
 10か所ほどの窓口があり、待ち人の少ない窓口で順番を待った。やっと自分の番が来たと思い、サンセバスチャン行きのTALGO1等が欲しいと言うと、上を指さして怒っている。やっと判った。窓口の上に整理券番号が電光表示してあり、皆その順番を待っていたのだ。そこへ割り込むものだから怒るのも無理はない。
「perdon ごめん」
と言ってその場を去った。
 さてどこでその整理券を手にするのか思案していると、お婆さんがその場所を教えてくれた。
 小さな機械にHOY(今日)OTRO DIA(他日)と2種類の表示がありボタンを押すと整理券が出る仕組みになっている。私は最初間違えてHOYを取ってしまったので、明日用のOTRO DIAを取り直した。
 少し考えた。ノートに日付、行先、時間、TALGO、クラスをスペイン語で書いて、 そのページを破り順番を待った。順番が来ると「この切符が欲しい」と紙片を渡した。
「1等はない」
 係りの女性は私の出した紙片に4300ペセタと記入してくれた。安いと思う。
その後、一度ホテルに帰る事にした。

 帰り途にスリッパを買おうと立ち寄った店は雑貨屋ではなく食料品店であった。偶然に憧れのスペイン産コニャックCARLOS PRIMERO(カルロス・プリメロ)を見つけたので購入した。
 4300ペセタでサンセバスチャンの片道運賃と同じ額である。その酒は日本では売られていないもので、大変おいしく懐かしい酒である。
ホテルに帰ると午後2時を過ぎていた。部屋からサンセバスチャンのホセに電話を入れた。
「列車の切符が取れたので日曜日の16時22分そちらに到着する」
ホセは英語で答えた。
「駅からまっすぐホテルに行ってくれ、店には夜の8時に来てくれ、8時にオー
プンする」
昼食も忘れ、出発駅のチャンマルティン駅を見に行く事にした。    続く